神、宿る草「真菰」

真菰について

真菰は東アジアが原産のイネ科の多年草で水辺の湿地に群落をつくる沼沢植物です。4月初旬のころに芽を出し、茎や葉は2m以上に成長します。縄文時代中期の竪穴住居から真菰の種子が発見されていることから、日本にはイネより以前から自生していたと考えられます。

 

真菰には「マコモタケ」が出来る品種と出来ない品種があります。日本に古来より自生していた真菰にはマコモタケは出来ませんが、出穂して実(ワイルドライス)ができます。マコモタケが出来る品種は後に渡来したものです。9月中旬から10月中旬にかけて黒穂菌が寄生することで茎が肥大します。これがマコモタケです。内部には白い髄組織が詰まっていて非常に軟らかく、シャキシャキとした独特の食感があります。このマコモタケは、中華料理の高級食材として幅広く使われてきましたが、和食でも天ぷら、フライ、炊込みご飯、サラダなどにするとおいしくいただけます。

 

 山王寺棚田の圃場では自生種の真菰とマコモタケが出来る栽培種の真菰を育てています。自生種の真菰はしめ縄や民芸品の材料として使います。 

  歴史に登場する真菰

奈良時代に上梓された『出雲國風土記』(733年)には、まこも(表記:蔣)が三箇所、登場します。さらに古くは『古事記』『日本書紀』や『万葉集』、各国の風土記などにもみられ、少なくとも奈良時代以前から広く利用されていたようです。

 

『枕草子』など平安時代の史料には、出雲國(島根県東部)の産物として「出雲筵(むしろ)」の名がみえ、都で名が知れたブランド品であったことがわかります。同時代成立の『延喜式』では、神事に際して神職が座るために真菰のむしろを敷くことが定められ、出雲国からむしろが毎年300枚貢上されていること、出雲筵を朝廷の神事で使用することなども記載されています。

(引用:島根県古代文化センター主任研究員 佐藤雄一氏の論文より、画像:国立国会図書館デジタルコレクションより)

 

 神、宿る草「真菰」

 出雲大社では、毎年6月1日に「凉殿祭(すずみどののまつり)」別名「真菰神事」が執り行われます。これは大国主大神が、夏服に衣替えして「出雲の森」で暑さを避けられていたという故事に因んだ神事です。参道に置かれた真菰の上を国造が大御幣と共に参進祈念する神事で、国造(神様)が踏まれた真菰を頂くと無病息災、田畑に撒くと五穀豊穣との信仰があり、氏子は競ってもらい受け、まずは神棚に祀ります。また、お釈迦様が真菰で編んだむしろ(寝床)に病人を寝かせて治療されたという仏話があり、これが日本に伝わり、お盆に真菰で編んだ「盆ござ」や「盆舟」を奉げるようになったと云われております。

 

出雲大社ご本殿のしめ縄は真菰です。

ご本殿と瑞垣内摂社のしめ縄は真菰で出来ています。記録をさかのぼること元治元年(1864年)から毎年4月に出雲大社本殿注連縄講社(出雲市斐川町の17軒の農家)の皆さんによって奉納されてきました。(ご本殿が祀られている瑞垣内は一般には開放されていない為、普段は参拝できません。)材料の一部を「出雲國まこもの会」から奉納させていただいています。

 

八重垣神社の茅の輪は「真菰」です。

大祓いの神事で使われる茅の輪はカヤが使われる場合が多いですが松江市の八重垣神社の茅の輪は真菰です。材料は「出雲國まこもの会」から奉納させていただいています。

  真菰の健康効果

食物繊維が豊富で、ケイ素や葉酸などの他ビタミンB1B2、カルシウム・鉄などのミネラル、クロロフィルを含有します。これらの成分が体内の有害物質を排出して腸内の善玉菌を増やし慢性疾患を予防、血圧や血糖値の低下、免疫力の強化などに有効といわれています。

 

中国の代表的な古書「本草綱目」には、真菰が肺・心臓・肝臓・脾臓・腎臓の五臓を利し、毒を消すとあります。また、静岡大学の河岸教授らの最近の研究発表では真菰に宿る黒穂菌は骨粗鬆症の予防に効果があり、初期の免疫反応に関わるマクロファージ(大食細胞)を活性化させることが明らかになっています。

 

 真菰の効能について裏付けとなる資料(エビデンス)を求められることがありますが、私は「ない」と答えています。成分分析の結果、食物繊維が多いこと、ケイ素や葉酸は確かに多いです。デトックスパワーはケイ素がその役割を果たしている言われていますが調べてみると100g中1470mg(島根県環境保健公社調べ真菰の根)と破格に多い。しかし、少ない成分でも現代の科学で証明出来ない効能もあります。真菰は、未知なる領域に包まれている薬草のように思います。

 (画像:国立国会図書館デジタルコレクションより) 

  真菰を使った水質浄化

 水中の汚濁物を取り除く働きがあることから、植生浄化施設や植生回復浄化施設等においても利用されています。島根県の斐伊川や霞ヶ浦、琵琶湖を始め、ラムサール条約に指定されている沼地などで真菰を使った水質浄化事業が行われています。

 

山王寺のまこも田では絶滅危惧種に登録されている「タガメ」が生息しています。農薬や化学肥料、河川の改良で餌となるドジョウやカエルなどがいなくなったことが原因です。昔はどこにでもいたタガメが今はどこにもいません。しかし、ここは自然のまま、タガメ天国です。

 

写真はタガメの卵です。

私たちが真心込めて栽培しました

ここは島根県雲南市大東町山王寺の棚田です。全国棚田百選にも選ばれている自然豊かな地域です。

山水が流れ込む田んぼで2012年より栽培を始めました。有機栽培指導の西村和雄先生から苗を頂いたのがきっかけです。現在は約2反で1500株の真菰を育てています。もちろん農薬や化学肥料は一切使いません。県のエコロジー農産物(農薬、化学肥料不使用)の認定も受けています。

私たちが育ている田んぼの水は全て自然の山水です。他地域の真菰と比較すると背丈も高く極めて精力的に育ってくれています。山林のミネラル分が多量に流れ込んでいると考えられます。

 

まこも茶とまこも青葉パウダーの原料は最も勢いが良い6月~8月の葉を刈り取ります。9月~10月はマコモタケの季節です。

出雲大社ご本殿しめ縄として奉納する葉は10月に刈り取ります。

 

まこもギャラリー